五郎丸 塊維 作品展
"HANA" |
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『花は主役か助演者か…??』
衣服、小物、アクセサリー、パーティー、祝事、インテリア、冠婚葬祭…
何も無いところから、ひとつの演出を企てたとき、"HANA"はしばしば登場する。デザインの素材として、または、香り漂う生花をそのまま目的の場所へ置く、など。
その頻度は高く、『花無しでは、装飾は語れない』と言い切ってみても、過言ではない。
しかし、そんな重責な花たちも、なぜだろう…? 得てして、誰かの、何かのために使われているばかり。『花を添える』という言葉を、あまりにも自然に耳にする。
花は、主役にはなれない?
カンヴァスに描かれた花は、助演者か?
何気なく見過ごしてきた日々を、本展で斬拓く。 |
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五郎丸 塊維 作品展 "HANA" 開催にあたって |
お忙しいさ中のご来場、心より感謝申し上げます。
この度は、作品制作に"花"というテーマを掲げました。とはいえ、花図鑑のような、難しく、聞いたことも無い珍しい花を列挙する趣旨ではなく、身近な花たちのもつ生命力を、『絵を描く』という行為に照らし合わせ、ここで一度推し測ってみようという試みです。
デザイン・贈物・装飾等で頻繁に用いられている "HANA" ですが、それらのほとんどが、誰かの、何かのため。果たして、花は主役になれるのか…?
ごゆっくり、ご高覧ください。
2011年 清春
Atelier Kaii
五郎丸 塊維
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『向日葵』
五郎丸 塊維 画
F8号・カンヴァス・油彩
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卓上に置かれた花瓶の花の絵を描いていると、良く困難に直面する。画面下部の両サイド…あまりにも左右対称となり、殺風景な印象を与えるのだ。
ゴッホはしおれかけたアイリスを描き込んでまで、その空間処理を行った。枯れそうな花を描くなど、絵を本気で売ろうと思う画家ならば、決して選ばない行動であろう。
そうまでして、絵を飽きさせないようにしようとする画家の意図とは?絵に、永遠に輝ける存在となって欲しい、その願いにほかならない。
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『月明かりのヴィーナス』
五郎丸 塊維 画
F15号・カンヴァス・油彩
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例えば、画家が肖像画の注文を請けたとする。
モデルの人物は、おそらく主役如何は、何ら気にもしていない。
けれど、観る側はいかがであろう?
どこの誰かも知らない人が描かれている絵と、子や親、愛する人など、身近な存在が描かれているそれとでは、愛着に大きな差が出る。主役と助演者、それ以上の開きが出ることも多々ある。 |
『ペンギンは花を知らない』
五郎丸 塊維 画
F8号・カンヴァス・油彩
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私はこの "HANA" 展を、本作で締めくくろうと思う。
仮に、ペンギンが生涯の総てを極寒で生活したとすれば、花を見ずしてその人生を終えることになる。
つまりペンギンは、自分にとって、花が有益な存在なのか否なのか、理解が出来ないのである。
花は主役か助演者か…?
答えは、皆の心にある。答えは、皆の生きざまにある。経験を以て、答えは出る。日々を大切に生きてこそ、想い出が自分自身と混ざり合う。
人は、経験を飛び越えて結論を下す生き物ではないと、私は思っている。甘さも辛さも苦さも、『食』の過程の、いわば到達点である。
子供が言うことを聞かないのであれば、そこへ通じる道に大木が倒れていないか、親が確認すべきではなかろうか。
『可愛い子には旅をさせろ』と、先人は言った。
然るべき経験は、更なる成長の起爆剤となる…そう諭したのであろう。不味いものを食べた時、初めて子供は思うのだから…『昨日お母さんが作ってくれた料理って、意外に美味しかったんだ』と。
私は、フランス留学の最初のひと月で、自分の絵が大嫌いになった。日本にいた頃は、大好きだったはずなのに。
殻を破れば、人の意識は変わる。最初はペンギンでもいい。けれどいつかは、徳を積み、あの大空へ翔び発とうではないか。
画家の責任とは、重大である。なぜなら、モチーフの輝きを、永遠の光へと変えなければならないのだから。
それを言い換えれば、画家は決して主役にはなれないことになる。
主役はまさに、描かれた、その絵なのである。
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作品展を終えて |
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父の遺作展の準備もあり、裏方事情を申し上げれば、限りなく時間に追われた作品展"HANA"でした。展示会直前の四晩など、睡眠時間は合計してもひと桁しかとれず、立ったまま寝てしまい、アトリエの収納BOXにぶつかって目を覚ましたことを思い出します。
そんな慌しい準備期間でしたが、しかしながら、会場へお越しいただいた皆さま方の笑顔、そして遠方から届く励ましとお祝いのメール等々、ひとつの業を成し得た安堵からくる喜びは、何とも心地よいものがありました。
私自身、"花"だけをテーマに作品展を催したのは画業人生に於いても初めてのことで、いたく勉強をさせられました。多くの過人が対峙してきた課題ですが、今さらながらに、この、近い将来制覇すべき山の大きさを、痛感しております。
個展は、画家にとって、自分の仕事を見直す良い機会であります。次から次に描かなければならないアトリエと違って、自分の作品を、椅子に座って、じっくりと眺める機会に肖れるのです。今後手にすべき武器を、じっくりと見定める好機なのです。
ご来場いただいた皆さまは、今回、四切ポスターに用いた原画であるF6号の油彩画、『シクラメン』をどうお感じになられたでしょうか?
父の遺作展会場には、父自身が描いた『シクラメン』を飾りましたが、実家であの絵を見つけたとき、私は、今回のテーマを"HANA"に決めようと、腹をくくりました。
今回ポスター化したシクラメンは、私が、亡き父へ捧ぐ一枚です。私が遅ればせ、私の生まれる前に描かれた、父の古い作品群を観る機会を与えられ、例年のコンクールに出品し続けた大作には見られない躍動感、現世を離れた世界観、色彩の豊かさ、思慮深さ、更には重すぎるほどのマチエール、それらの偉業を肌で感じ、これはぜひとも、あの世まで果たし状を送りつけるべきかと、そういう気持ちで創った一枚です。
灯台下暗し…
遺品としてではなく、もう少し早く父の小品と出遭っていれば、私の描いたシクラメンの批評を、父本人から聞けたのかもしれません。今となっては、若輩の私に語ってくれるのは、父の遺作のみとなりました。死別とは、何ともさめざめしいものです。
2011年3月
Atelier Kaii
五郎丸 塊維
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五郎丸塊維・四切版ポスター『シクラメン』
※著作権保護のため、見本画像には『SAMPLE』と印字しております |
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五郎丸塊維・ポストカード
デザイン 全6種
※著作権保護のため、見本画像には『SAMPLE』と印字しております
<セット内容> |
F4 ベゴニア
F6 ひなげしのある窓際
F6 ひなげし
F8 向日葵
F8 ペンギンは花を知らない
F10 薔薇 |
※ポスター及びポストカードは、『Atelier Kaii Web Gallery』にて販売しております
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